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D-0024 eCloud研究会の新しい研究テーマについて
2011年2月20日 中島丈夫 投稿
この2月3日に、情報処理学会のソフトウェア・ジャパンに出かけてきました。
めったに公の場に出なくなった自分を戒めるためにも、覗いてきました。
Cyber Physical System (CPS)、という特集で、このラマンチャ通信やeCloud研究会でも少し議論してきたスマート・プラネットや、ストリーム・コンピューティングにつながる技術などがテーマでした。
Cyber Physical System (CPS) は、本来、IBMが言いだしっぺのスマート・プラネットのような、社会インフラをITによって賢くするのがテーマですが、小生にとっての大きな驚きは、東大の喜連川先生や日立研究所の矢野和夫さんが言及・主張された、CPSの重要分野としての、人間の身体性への注目でした。
本当に驚きましたね、小生の問題意識と殆ど一致していました。
特に矢野さんのCyber Physical Systemにおける究極の目的を、人間のコミュニケーションの、新しい方法による理解に置いているという主張に、感動しました。
現在は、名刺型センサで人間系の物理的な行動をデータ収集し、SNS (Social Network System)などの技術を使って蓄積された膨大なデータから知見を抽出し可視化する、”ビジネス顕微鏡”という実ビジネスを立ち上げておられます。
人間系における本質的なコミュニケーションの構造を、実世界からの膨大なデータ収集と解析によって可視化し理解する方法は、将来、ノーベル賞候補にもなりそうです。
矢野さんによると、中国古来の易と、彼の膨大な実世界データ解析とがよく一致するということでした。
ストリーム・コンピューティングの重要な方法論として、蓄積されたデータの知見から、リアルタイムなイベント情報をエンリッチして実世界制御を行うことが挙げられますが、易占いもこれに通じます。
小生がラマンチャ通信でスタートしている、Trsut の旗や、気の流れの構想は、正にこの点にあります。
人間の身体性を重視した、Trust の成立、コミュニケーション・プロトコルの理解と応用にあります。
小生の動機は、日本人のグローバル化にすり合わない下手なコミュニケーション能力を、IT援用でなんとかしたいという点にあります。
Facebookの力によって、完全にボトムアップなエジプト革命が成功したという衝撃のニュースは、Cyber世界のこれからの大きな可能性を示唆するものですが、一方で、小生にはCyberだけの仮想世界の限界が気になってしかたありません。人間の進化の方向性に対する大きな危険性さえ感じてしまいます。
実世界の都市化の大きな流れのなかで、養老猛さんの”唯脳論”の喝破が頭から離れません。
人間の本来の幸せ(?)とは何か、ということですね。
小生風に表現すれば、脳のひだと心のひだの構造論です。
その意味で、Augmented Reality なども包含した、人間系のCyber Physical System (CPS)の重要性に着目しています。
矢野さんは、今まで科学の対象になり難かった人間特有のセマンテイックな行動分析が、CPSによる膨大なデータ量の大容量解析で全て解けると、自信満々でした。新しい科学の方法を発見したと。
しかし小生はこの点では矢野さんとは距離を置いていきます。
以前にも書きましたが、40年以上前に出たドレィファスの論文(12/1965)の主張する、人間のセマンティックな処理の構造と、前頭葉的な論理回路のスピードアップによる膨大な演算能力による力攻めの方法は、違うものだ、という理解は変わりません。
尤も、最近ではIBMの"Watson Jeopardy!" がクイズ番組で賞金王になりましたし、コンピュータ将棋 ”あらから2010”が女流王将に勝利した、というニュースも斬新ではあります。
いずれにしても、矢野さんのような現役の日立研究所リーダーの組織力と計算機能力に、市井の老いぼれが叶う筈もなく、ま、ボチボチと瞑想を拡げていくことぐらしか出来ません。
ということで、eCloud研究会のテーマの一つとして、Cyber Physical Systemによる人間系コミュニケーションのモデル化、に少しずつシフトしていきたいと考えています。
膨大なデータ収集など出来るわけがありませんから、モデル化で頑張ってみようかな、ということですね。
殆どが瞑想(迷走)になると思いますが、コンピューティング・モデルが大きくヒューマン・インターフェースに再び重心を移して行く流れの中で、何か貢献できれば、とも考えています。
CPSではヘルスケアがビジネスの重要なテーマですが、心のケアの分野も劣らず重要となるでしょう。
余談ですが、情報処理学会のソフトウェア・ジャパンでは、結構な赤恥をかいてしまいました。
当日、会場で待ち合わせていた菅原さんと昼食にでかけ、気楽にビールを一杯飲みました。
これが間違いのもとで、午後のパネル・ディスカッションの質問にしゃしゃり出て、酔いが一気に回ってしまい、単なる酔っ払い爺の醜態を見せてしまいました。
元IBMの出身だと名乗って絡んだため、壇上の岩野さんも丸山さんも、辟易した顔でプイ!、でした。
席に戻ってくると、くだんの菅原さんは、赤の他人の風情で、知らんぷりを決め込んでおられました。
さて、eCloud研究会が当初から主張してきたプライベート・クラウドはどうなるのでしょうか。
これからも紆余曲折があるのでしょうが当たり前のシステム環境として受け入れられて行くものと考えます。
一方で、その導入のスピードは予期した以上に遅いですね。
特にIBMが一向に絡んでこない。何かあったのでしょうか。
これも余談ですが、昨年5月にIBMのクラウド開発の総責任者、Kristof Kloeckner、が来日した機会に、当時未だIBMに在籍していた菅原さんが”イチャモン”を突きつけたらしい。
小生は、どうもその後遺症で、遅れてしまっているのではないかと、邪推しています。
最後になりますが、eCloud研究会の研究テーマとしては、”レガシー・マイグレーションto クラウド”に、焦点を絞っていこうかな、と考えています。
もともとの動機が、チェンジ&レジリエンスというレガシー・システムの課題解決が目的だったわけです。
全体に動きが遅いでですが、実際の検討が少しずつ行われているように聞き及びます。
そこでの課題は、やはりプラットフォームの”De-coupled”の方法です。
もう一度SOAの原点まで遡って、組み立てなおす必要も、ありそうです。
eCloud研究会の在り方について、できましたら、ご意見をいただければ、幸いです。
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SOAの初期のころののコミュニケーション・モデル。
その後一気にESBやBPELなどに飛び込んでしまったが、
もう一度基本的な構造の考察が必要かもしれない。 |
クラウドのサービス・モデルについて、ガバナンスの切口
からのコミュニケーション・モデル構築が必要。 |
CPSにおけるコミュニケーション・モデルも、SOAやクラウドの
サービス・モデルを参考にすることが考えられる。 |
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