クラウド・コンピューティングの理解が進むにつれ、IT業界のステークホルダーが其々の立場・切り口からカンカンがくがくの議論を展開し始めています。一方でクラウドの世界の拡がりは、現在見えているものだけでは把握できない大きなポテンシャルを内在しています。例えば私たちeCloud研究会のフォーカスは、未だに姿を現していない企業システムの変革にあります。現在、理解されているクラウドの範囲からするとeCloud研究会の議論はよく理解できないかもしれません。
そこで、技術の動向や見通しを付けるためにR-0008にクラウドの一般的な構成を描いてみました。
図において、eCloud研究会がフォーカスするドメインは左側の企業系プライベート・クラウドにあり、現在盛んに議論されている右側のパブリック・クラウドにはあまり関心を持っていません。しかし、いろんなアプローチがあるにしても、そこには共通のクラウドと呼ばれる属性があるわけで、また企業システム全体から見れば多様なクラウドの連携も重要になってきます。その意味で、各種クラウドには共通のアーキテクチャ、フレームワークが必須であり、その技術が研究・開発されています。
重要なのは、その共通技術、アーキテクチャを早い時期に俯瞰、押さえる事にあります。それによって、企業にとって重要なエンタープライズ・アーキテクチャとしての落としどころと、ステップを踏むべきロードマップが見通せるようになります。
パブリック・クラウドについては既にビジネスが展開されていますから比較的良く理解されていると思われますが、左側のプライベート・クラウドについては未だ殆んど理解されていないのが現状でしょう。その価値も含めて、全く正反対の評価を有識者が発言しているのには驚かされます。しかしこれも時間の問題で、クラウド・コンピューティングの旗の下で開発・応用される技術とその効果が顕在化してくることで自明のものとなっていくと思われます。
ここでのポイントは、企業システムにおける開発系と運用系のある種の距離感が、クラウド・アーキテクチャによって大きく改善されるだろうという見通しです。テスト・クラウドを例にとれば、開発やテスト環境での迅速で柔軟な計算機系資源のセットアップが、開発・運用の領域を融合し、大変大きな効果を企業システムにもたらすだろうという期待があります。このような効果が本番系にも活用できれば、現在の3K、4Kと苦しむ重いシステム環境を脱皮できるのではないかと期待されます。
そのあたりの論議が第2象限に含まれています。
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