R-0023 ユーザー主導アーキテクチャ: Smarter NFRの実現 -1-
2010年10月05日 中島丈夫 投稿 |
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ユーザー主導アーキテクチャの例として、Smarter NFRの実現について、上図に掲載します。
現行ミッションクリティカル・システムの考え方は、左図のようなNFRの案件ごとの作りこみを常識としています。
これによって、案件ごとの個別の多様な要求粒度を満足することが出来ます。
しかしこのアプローチが、システム構築の最大のボトルネックになっています。
またシステム移行やシステム修正時のテスト工数の増大の原因になっています。
多種多様なNFRをその都度設計する工数と品質を改善するために、リファレンス・アーキテクチャを基礎にしてNFR設計をします。
しかしそれでも、ダウンタイムや復旧時間の要件などで、出来上がったシステムと(潜在的な)ユーザー要求との乖離が存在します。
このギャップを解消するために、経済産業省のリーダーシップのもと、主要ITベンダーが参集し、非機能要求グレードが研究、洗い出され、IPAから参照・利用できるようになっています。
(R-0004 非機能要件(NFR)の重視と技術革新への変革の両立)
これは大変重要な業界の成果ですが、アプローチが作りこみを前提としているために、新技術導入や互換性やテスト工数などの点で、依然として残された課題も多いと考えます。
特に、クラウド環境になれば、クラウド・プラットフォームが事前に準備され、その利活用が前提となりますので、一から作りこむ現在のアプローチには大きな限界があります。
eCloud研究会ではプライベート・クラウドを積極的に利活用してユーザー・システムの課題を解き、技術革新のサイクルに柔軟に適応できるユーザー主導アーキテクチャの構想を持っていますが、このNFRのクラウド環境での充足を主要な目的の一つと考えています。
即ち、企業ニーズにあった俊敏なNFR充足、Smarter NFR の実現です。
Smarter NFRの実現の一つのサンプルを右図に示しています。
クラウド・プラットフォームで選択できるNFRは限定されているため、現状でははなからクラウドの適用が限定されてしまいます。
一方で、メーカー提供のクラウド・プラットフォームをNFR充足の有無で選択・導入すると、当該クラウドにロックインされてしまう危険性が大きくなります。クラウドと呼びながら、結局、現行のサーバー環境の制約と固定化の再現ということに落ち込んでしまいます。
eCloud研究会ではこの大きな課題を解決するために、NFRの腑分けを提唱しています。
既存のクラウド・プラットフォームで準備されているNFR (NFR-Infrastructure)、ユーザー側アプリケーションと密接不可分なNFR (NFR- Application)、そして、NFR-IとNFR-Aのギャップを埋める、準システム・サービスとしてVAC実装のNFR (NFR-Value add) です。
特にNFR-Vを括りだすことによって、クラウド環境での制約と自由度のプロス・コンスを最大限絞り出すことができると考えています。
NFR-AをeVA (enterprise class Virtual Appliance)に、NFR-V をVAC (Value Add Capability
appliance)に実装する自由度は、ユーザー自身やSIer、ベンチャー企業などの英知を、ハイブリッド・クラウドを含む、広くクラウド環境に導入することが出来るようになると考えています。 |
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